児童相談所が平成29年度に対応した児童虐待の件数は13万件を超え、過去最多を更新したことが厚生労働省のまとめでわかりました。
NHKニュース、日本経済新聞など報道各社が伝えました。
厚生労働省は8月30日、児童虐待の対応件数などを公表しました。
それによると、2017年度に18歳未満の子どもが保護者から虐待を受けたとして児童相談所が対応した件数は13万3778件でした[1]。
前年度からは1万1000件(9.1%)の増加でした。
児童虐待対応件数は、統計を取り始めた平成2年以降、毎年過去最多を更新し続けています。
(なお、「相談対応件数」とは、平成29年度中に「児童相談所が相談を受け、援助方針会議の結果により指導や措置等を行った件数」とされています[1]。)
児童虐待件数の爆発的増加が続いている
平成2年に統計を取り始めて以来、虐待相談対応件数は増加し続けています。
虐待の内容別の件数では[1]、「心理的虐待」が72,197件で最多でした。
「心理的虐待」には、言葉による脅しや無視だけでなく、きょうだい間で差別的な扱いをする、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス、いわゆる面前DV)、きょうだいに虐待行為を行う、などの行為も含まれています[2]。
次いで、殴るなどの暴行を加える「身体的虐待」が3万3223件、子どもの世話をしない「ネグレクト」が2万6818件、「性的虐待」が1540件でした。
前年度の件数と比べて性的虐待は減少しましたが、他は増加しました。
近年の傾向としては、虐待全体に占める身体的虐待の割合が低下する傾向にあり、平成25年度以降は心理的虐待が最も大きな割合を占めるようになっています。
厚生労働省の資料[1]によると、心理的虐待が増加した要因として、子どもがいる家庭内で配偶者に対する暴力があるケース(いわゆる面前DV)について、警察から児童相談所への通告が増加したことが挙げられています。
虐待の内容の内訳
平成25年度以降は、身体的虐待よりも心理的虐待の占める割合の方が高くなっています。
また、児童相談所に虐待の相談・通告をした相談者別では[1]、「警察等」が6万6055件で49%を占め、最多でした。
次いで「その他」が11%、「近隣・知人」が13%、「家族」と「学校等」がそれぞれ7%と続きます。
今年は、3月に起きた東京都目黒区で5歳の女の子が虐待死した事件をきっかけに、児童相談所と警察の情報共有のあり方や、自治体をはじめとする関係機関の連携のあり方に注目が集まっています。
虐待の相談者の内訳
児童相談所に虐待を相談した者の内訳では、警察が最多を占めています。
最後に都道府県別でみると[1]、平成29年度に虐待対応件数が最も多かったのは大阪府で1万8412件、次いで神奈川県が1万3928件、東京都が1万3707件、埼玉県が1万3095件などとなっています(政令指定都市の件数も算入)。
逆に件数が最も少なかったのは鳥取県で76件、次いで島根県が203件、佐賀県が248件、山形県が271件などとなっています。
この他、子ども虐待による死亡事例などの検証結果も8月30日に公表され[3]、平成28年度の子どもの虐待死は49人でした。
例年と同様に0歳児の虐待死が最も多く(32人、65%)、中でも生後1月目の乳児が高い割合を占めています。
虐待の内容別では身体的虐待による死亡が27人(55%)、ネグレクトによる死亡が19人(39%)でした。
この死亡事例などの検証は定期的に結果が公表され、今回で14回目です。
【2018年8月31日追記】厚生労働省は同時に所在不明児童についての統計も公表しました。それによると、平成30年6月1日時点で居住実態が把握できない児童が全国に28人いるということです。調査対象となったのは平成29年6月1日時点で住民票があるにもかかわらず、乳幼児健診が未受診等で市町村が所在等の確認が必要と判断した児童1,183人で、このうち1,555人は海外にいたり、関係機関によって国内で所在が確認できたりしたということです。
政府は7月20日に子ども虐待の緊急対策を決定していて、これに加えて年内には「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」を決定し、2019年度から2022年度までの児童相談所の体制強化などの計画を示すことにしています。
社会で子育てドットコム編集部
「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。
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