あなたは里親についてどんなイメージを持っていますか?
里親になってみたいと思いますか?
児童虐待や貧困などで保護された子どもの受け皿として、里親が注目されています。
東京都は里親制度に関する都民の意識調査を実施し、結果を公表しました[1]。この調査は、都内に住む 20 歳以上 70 歳未満の 3,000 人を無作為抽出して行われ、1,360 人(45.3%)から有効回答を得ました。
里親制度は、都内でどのように認知されているのでしょうか?
里親制度への印象は?
あなたは「里親」について、どのような印象を持っていますか。
(複数回答可、回答者全員(1,360人)が対象)
あなたは、里親という制度にどんな印象を持っているでしょうか。
この調査によると、里親への印象は「里親は必要だと思うが、血のつながらない子供を預かることは大変だと思う」が 68.4% で 1 位、「社会的に意義があり、必要な制度だと思う」が 67.1% で 2 位でした(複数回答可)。このうち、「里親は必要だと思うが、血のつながらない子供を預かることは大変だと思う」は、年齢層が上がるほど増えていました(20 歳代が 64.2%、60 歳代が 71.5%)。
次いで「必要な制度だと思うが、身近に感じられない」(41.3%)、「子供を皆で育てていくという温かいイメージがある」(27.9%)、「かわいそうな子供を育てるイメージがある」(22.7%)などとなっています。
総じて、里親制度が必要だと感じている人は多いものの、自分に引き付けて考えると「大変だ」「身近に感じられない」というイメージになるようです。
里親になってみたい?
あなたご自身は里親になってみたい気持ちはありますか。
(ひとつ選択、回答者全員(1,360人)が対象)
里親になってみたい気持ちがあるか尋ねる質問では、里親に「なってみたい」という人は5.1%に留まりました。若い年齢層ほど多くなっていましたが(20 歳代が 7.9%、60 歳代が 2.8%)、性別による差は見られませんでした。
最も多かったのは「里親は必要な制度だと思うが、自分はなりたくない」で 49.7%、次いで「関心があるが、難しい」が 40.7% でした。
あなたが里親になってみたい理由は何ですか。
(複数回答可、69人が対象)
里親に「なってみたい」と答えた 69 人に、その理由を尋ねたところ(複数回答可)、「親元で過ごすことのできない子供にとって家庭的な環境は必要だと思うから」が 68.1% で最多でした。
次いで「子供が好きだから」(46.4%)、「社会福祉の役に立ちたいから」(36.2%)、「実子がいないから」(24.6%)などとなっています。
里親になりたい気持ちがあっても、
里親への登録を希望する際に何が課題になると思いますか。
(複数回答可、554人が対象)
一方、里親になることに「関心があるが、難しい」と答えた 554 人に、なぜ難しいのかを尋ねたところ(複数回答可)、上位は「経済的に余裕がない」(52.2%)、「仕事があるため、難しい」(39.5%)、「家の広さに余裕がない」(38.4%)でした。この上位 3 つは、社会経済的な制約に関する内容と言えます。
実際のところ、里親には里子の生活費等の経費や里親手当が支給される仕組みになっていますが、里子にかかるすべての経費がカバーされるわけではありません[2]。
このほか、気持ちに関係する回答としては、「血のつながらない子供を育てるのは難しいと思う」が 30.5%、「家族の理解が得られないと思う」が 22.0% でした。
たしかに、里親になるにあたっては、同居する人全員(未成年者含む)の意向が確認されます。
必要な支援は何?
里親になることに「関心があるが、難しい」と回答した人に、どのような支援が必要か尋ねた質問(複数回答可)では、1 位が「里子の養育に関して行政や周囲の支援があること」でした。
次いで「子供の養育に関する経済的な支援」(63.7%)、「保育園の活用など、子供を終日見ていなくてもいいような支援」(57.0%)などとなっています。
都による支援体制については、東京の里親で作る「東京養育家庭の会」が意見書を作成しています[2]。
それによると、児童相談所の担当者が「育児書通りの意見」しか言わず、里子をサポートするうえで障壁になっているとのことです。対策として、(1) 児童相談所の職員に対して、里親の悩みに共感できるようにするための研修を実施すること、(2) 里子・里親の状況をよく見聞きしている「里親支援専門相談員」の意見を尊重すること、の2点が要望されています。
国は里親委託を推進
厚生労働省は、児童相談所が保護した子ども等について、児童養護施設・乳児院への委託を減らし、里親委託を増やすという数値目標を掲げています[3a,3b]。これを受けて東京都は、里親委託を増やすことを盛り込んだ計画を2019年度中に策定する予定です[4]。今回の調査は計画策定にあたって基礎資料を得るために実施されました[1]。
今回の調査結果の詳細は東京都福祉保健局のホームページにて公開されています[1]。
参考文献
- [1] 東京都福祉保健局「令和元年度 東京都里親制度に関する都民・企業向け調査について」2019年11月26日閲覧( リンク )
- [2] 東京養育家庭の会「各支部からの東京都社会的養育推進計画の策定に向けた意見書」(東京都児童福祉審議会専門部会 第4回 委員提出資料(藤井委員))令和元年7月8日付、2019年11月26日閲覧( リンク )
- [3a] 厚生労働省 新たな社会的養育の在り方に関する検討会「新しい社会的養育ビジョン」平成29年8月2日付、2019年11月26日閲覧( リンク )
- [3b] 厚生労働省子ども家庭局「「都道府県社会的養育推進計画」の策定について」平成30年7月6日付、2019年11月26日閲覧( リンク )
- [4] 東京都福祉保健局「児童福祉審議会専門部会テーマ」(東京都児童福祉審議会専門部会 第1回 資料2)平成31年2月18日開催、2019年11月26日閲覧( リンク )
社会で子育てドットコム編集部
「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。
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