お隣で、大人が子どもに暴力をふるっているような音がする――
近所で、子どもが深夜に外に放置されている――
「虐待されているかもしれない子どもがいる」。そんな時、あなただったらどうしますか?
実は、虐待を受けているかもしれない子どもを発見した場合、一般市民であっても児童相談所などに連絡をすることが法律で義務づけられているんです[1]。
どこに連絡すればいい?
虐待されていると思われる子どもを発見した場合、その地域を管轄する「児童相談所」または「福祉事務所」に連絡をすることになっています[1]。
とはいえ、馴染みのない機関に電話するのは気が引けますね。
そこで、とりあえず「189番」(いち・はや・く) という電話番号を覚えておいてください。
児童相談所全国共通ダイヤル
189番は、厚生労働省が開設している「児童相談所全国共通ダイヤル」です。
電話をすると、オペレーターが24時間対応して、あなたの地域を管轄する児童相談所に電話を取り次いでくれます。
(※かつては音声ガイダンスで電話を転送していましたが、あまりに時間がかかるということで、2017年以降はオペレーターによる取り次ぎに改められました。【2019年12月3日追記】通話料が無料になりました。)
厚生労働省によると[2]、189番は
- 匿名で電話をすることができます。
- 電話した人の個人情報や電話で話した内容については、秘密が守られます。
- 連絡した内容に間違いがあっても、責任を問われることはありません。
- 虐待の連絡以外にも、自分の育児の悩みについて相談することもできます。
(※なお、警察(110番)でも子ども虐待の連絡を受け付けています。地域によっては児童相談所と警察が連携して現場に向かうこともあります(2018年9月現在)。)
189番に電話したら、どうなる?
児童相談所が189番を通じて受けとった連絡は、「相談」と緊急性の高い「通告」の2種類に分けられます。
「通告」を受けた場合、児童相談所は通告から原則48時間以内に現場に向かい、子どもの安全を確認することが法律で義務づけられています[3]。
子どもに生命の危険があるなどの場合は、児童相談所がその場で子どもを一時保護します。
さらに、必要があれば子どもを親から分離して、児童養護施設・乳児院や里親などに預けることを検討します。
一方で、児童相談所の仕事は親子を分離することだけではありません。
子どもと親を分離せず、在宅のまま親子を支援していく、という子育て支援の役割も担っているのです[3]。
親自身から「相談」を受けたケースや、親子分離の必要がないと判断されたケースでは、児童相談所は親の悩みや負担感に寄り添い、子育てをサポートする役割を果たします。
虐待という確信がなくても連絡してOK
とはいえ、「子ども虐待かもしれないけど、確信は持てない……」というのが普通だと思います。
確信がなくても189番に連絡して大丈夫なのでしょうか。
社会活動家の湯浅誠さんによる記事[4]に、とある児童相談所の所長へのインタビューが掲載されています。
その所長は、189番について次のように語っています。
「かもと思ったら」がポイント
泣き声などの断片的な情報だけから、虐待の有無や程度を判断するのは、どんな専門家にも困難です。しかし私たちとしては、だからこそ「虐待かもと思ったら、いちはやく(189)」とお願いしています。
「かもと思ったら」がポイントです。「わからないから連絡しない」ではなく「わからないからこそ連絡する」。
先ほど申し上げたように、行政には子どもとその親に関する多様な情報が集まっています。私たちはそれらの情報や専門家の知見も交えて判断できる立場にあります。
(中略)
だからこそ、一般市民のみなさんには、自分で抱え込むことなく、せっかく「発見」したことを私たちにも教えてください、とお願いしたいですね。
実は、189番に電話した後、児童相談所から通告者(あなた)に対して結果の報告はありません。
なので、「189に電話はしたけれど、その後どうなったのか…」というモヤモヤは残るかもしれません。
そんな時は「通告をためらってモヤモヤしているよりは良かったはず」と割り切ってみてはいかがでしょうか。
おわりに
子どもが親元で健やかに成長できるのが一番ですが、時に外部からのサポートが必要なこともあります。
「虐待かも?」と思ったら、189番に電話。あなたの電話で、一人の子どもや親を救えるかもしれません。
社会で子育てドットコム編集部
「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。
関連記事
最近の記事
- メディア掲載:「世界の児童と母性」89号―「コロナ禍で顕在化した子どもたちの ICT 環境整備の課題」
- ドイツ銀行グループ様の母子生活支援施設向け助成を実施しました
- ライツオン・チルドレンより、新年のご挨拶
- 経過報告(2):東京の児童養護施設10か所にパソコン72台を贈りました
- 「児童福祉施設でITを活用するための情報サイト」を公開しました
- 「児童養護施設にパソコンを贈る取り組み」を千葉・埼玉・神奈川の3県に拡大します
- 児童養護施設などのオンライン授業対応、国が補正予算で補助【5月7日追記】
- 経過報告(1):東京の児童養護施設20か所にパソコン125台を贈りました
- 東京の児童養護施設、オンライン学習対応に苦慮――緊急アンケート結果
- 2020年代の社会的養育を描く「推進計画」、各自治体でまとまる――里親委託の目標値は国と大きなズレ
人気の記事
- 表参道駅近くに新設計画の児童相談所などの複合施設、地元で反対の呼びかけに直面【12月19日追記】
- 児童養護施設にモノを贈るときのポイント――何が喜ばれる?注意すべき点は?
- 「母子生活支援施設」ってどんなところ?(前編)――DVシェルター以上の役割
- 里親と養子縁組を混同しないために、知っておきたい4つのこと
- 児童養護施設で暮らす子どもを短期間預かり、家庭経験を――「フレンドホーム」という仕組み
- 災害や病気で子育てができなくなった!→祖父母やきょうだいが子どもを引き取る場合、自治体から金銭的支援が受けられます
- 特別養子縁組の対象拡大、2020年4月から施行
- これって子ども虐待かも…と思ったとき、連絡するのはここ! 電話番号「189」
- 子ども虐待対応件数、平成30年度は16万件――前年度から20%増で過去最多
- 一時保護中のストレスや不安を少しでも軽減させるために――「一時保護委託」の環境整備