「社会で子育てドットコム」を運営するNPO法人ライツオン・チルドレンでは、日頃から児童養護施設や里親について啓発活動に取り組んでいます。
里親に関して比較的多い反応が、「え、里親と養子縁組って別物なんですか?」という声です。
……そう、里親と養子縁組は別の制度なのです。
厚生労働省は、里親や特別養子縁組を今後5~10年程度で大幅に増やすという目標を掲げており[1]、今後皆さんの身の回りで里親になったり、養子縁組したりするケースが増えていくと思われます。
友人が「里親になった」「養子縁組をした」などと話をしてくれた時、あなたは2つの制度を混同せずに受け止めることができるでしょうか。
今回は、そんな里親と養子縁組の違いについて解説します[2,3,4]。

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「里親」は、虐待や経済的事情などで親と暮らせない子どもを家庭で預かって育てる制度で、行政が子ども向けに提供する福祉サービス(社会的養護)の一部です。児童養護施設・乳児院と同じ役割を、一般家庭が担っています。
「養子縁組」は、個人同士の合意に基づき、家庭裁判所に申し立てるなどして親子関係を結ぶものです。原則6歳未満の子どもを対象にした「特別養子縁組」と、いわゆる「普通養子縁組」の2種類があります。
里親の場合、里親に親権はありません。実親が親権を持っていることが多いです(裁判所に親権停止を言い渡されている場合を除く)。里子の親権は児童相談所長が代行することになっていて、里子について重要な決定をするときは、児童相談所の関与が必要になります。
養子縁組の場合は、養親が親権者となります。このうち、「特別養子縁組」の場合は、実親と子どもの親子関係が終了し、養親が唯一の親権者になります。もう一方の普通養子縁組の場合は、実親も親権を持ち続けており、親子関係が二重に生じます(養親の戸籍には「養子」などと記載され、実子と区別されます)。
里親は、行政から子育てを委託されている立場なので、所定の養育費などが支給されます。
養子縁組は福祉サービスではないので、養親にお金の支給はありません。むしろ養子とのマッチングの手数料などを養親が負担するのが一般的です。
里親の場合、里子の実親の状況が改善したり、里子が上限年齢の18歳(~20歳)になったりした時点で、児童相談所が委託を解除します。
一方、特別養子縁組の場合、原則として親子関係を解消することはできず、法律上はずっと親子で居続けます。普通養子縁組の場合は、養親と養子の同意があれば縁組を解消できるとされています。
国連のガイドライン(児童の代替的養護に関する指針)[5]では、養育者との関係がずっと安定して続く環境が子どもにとってベストであるとされており、日本では特別養子縁組の制度がこれに該当します。
里親の場合は、子どもと里親の関係がうまくいかなかったなどの理由で、児童相談所が子どもを施設に移す(戻す)ことがあります。
今後の見通し
日本で施設と里親に委託されている子どもの割合は、2016年度は8:2程度で施設が圧倒的に多くなっています[3]。
厚生労働省は2027年頃2029年度頃までに里親への委託を大幅に増やすという目標を掲げています(3歳未満の乳幼児について2022年頃2024年度までに割合を1:3に逆転させる、など)[1]。
また、特別養子縁組の成立件数は2016年度に495件でしたが[4]、厚生労働省は2022年頃2024年度までに年間1,000件以上にするという目標も掲げています[1]。
今後、私たちの身の回りで「里親になった」「特別養子縁組をした」という人が増えることが予想されます。
「社会で子育てドットコム」では、子育てのカタチにとらわれず、子どもを育てるすべての親を応援していきたいと思います。
【2020年5月追記:「社会的養育推進計画」に合わせて、記事中の国の目標の達成年限を訂正しました。】

社会で子育てドットコム編集部
「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。
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