「里親制度」のこと、あなたはどこまで知っていますか?
児童虐待や貧困などで保護された子どもの受け皿として、里親が注目されています。
東京都は里親制度に関する都民の意識調査を実施し、結果を公表しました[1]。この調査は、都内に住む 20 歳以上 70 歳未満の 3,000 人を無作為抽出して行われ、1,360 人(45.3%)から有効回答を得ました。
里親制度は、都内でどのように認知されているのでしょうか?
そもそも里親制度を聞いたことがありますか?
あなたは「里親制度」を知っていましたか。
(ひとつ選択、回答者全員(1,360人)が対象)
里親制度を知っていたかという質問に対して、「言葉は聞いたことはあったが、制度の内容は詳しく知らなかった」が 68.0% と最も多く、次いで「言葉も内容も知っていた」が 21.4% でした。「言葉も内容も知っていた」は女性のほうが男性よりも多くなっています。
一方、「知らなかった(この調査で知った)」は 8.2% でした。
また、里親制度を知ったきっかけの 1 位は「テレビ・ラジオ」で、7 割超でした(複数回答可)。
里親制度を広報するために有効だと思う方法は何かという質問についても、「テレビ・ラジオ」が7割で最多でした(複数回答可)。インターネット・SNS の活用は 44.6% で3位でした。
最近では、東京都から委託を受けている里親支援機関が「Tokyo里親ナビ」というホームページを立ち上げて、里親に関する情報発信に取り組んでいます。
ところで、里親制度は養子縁組制度と混同されやすいものです。里親と養子縁組の違いについては、こちらの記事をご覧ください。
里親制度の内容を知っていますか?
里親制度について知っていた具体的な内容を尋ねる質問もありました(複数回答可、里親制度を「知っていた」または「言葉は聞いたことがあったが詳しくは知らなかった」と答えた 1,216 人が対象)。
あなたは、次の 8 項目をどれくらい知っていましたか?(7 番目の項目は東京都独自のものです。)
- 里親は児童福祉法に基づく、保護者の下で暮らすことのできない子供のための制度である
- 里親は、児童福祉法に基づき一定の基準を満たした養育を子供に対して行う責務がある
- 里親には養子縁組を目的としない養育家庭(里親)と養子縁組を前提とする養子縁組里親、親族里親等がある
- 子供の養育に関して児童相談所をはじめとした関係機関の支援がある
- 里親に対しては、子供を委託している期間、子供の生活費が支払われる
- 里親の登録申請は、都内にある児童相談所で受けつけている
- 都では養育家庭(里親)に「ほっとファミリー」という愛称をつけている
- 2か月未満の短期間のみ子供を預かる里親もいる
「里親制度」について知っていたことを選んでください。
(複数回答可、1,216人が対象)
最も基本的な内容である「里親は児童福祉法に基づく、保護者の下で暮らすことのできない子供のための制度である」については、66% の人が知っていたと答えました。
しかし、他の内容は総じて認知度が低く、例えば「里親は、児童福祉法に基づき一定の基準を満たした養育を子供に対して行う責務がある」は 25.8%、「里親に対しては、子供を委託している期間、子供の生活費が支払われる」は 16.1% の人しか知りませんでした。
8 つの内容をすべて知らなかったと答えた人も 23.1% いました。
普及しないのはなぜだと思う?
里親制度が広く普及しない要因は何だと思いますか。
(複数回答可、回答者全員(1,360人)が対象)
里親制度が広く普及しない要因を尋ねる質問では、「里親についての情報が少なく、馴染みがない」が 74.0% で最多でした(複数回答可)。
次いで「住宅環境が厳しく、子供を養育するのが難しいから」(52.5%)、「社会では、血縁を重視する風潮があり、血縁がない子供を家庭に迎え入れることが一般的ではないから」(49.6%)などとなっています。
住宅環境や血縁重視の風潮などの社会的条件も課題ですが、そもそも馴染みがないことが最大の要因と受け止められているようです。
ちなみに、東京都の里親登録数は平成29年度末の時点で 793 世帯でした[2]。平成29年度の間に新規登録が 155 世帯あったものの、登録取り消し(登録を更新しなかった等)が 133 世帯いたため、差し引きすると微増に留まっています。
東京都の里親制度は、基本的に単身世帯は登録することができず、配偶者がいる世帯、または養育を補助できる同居者(親族等)がいる世帯に対象を限っています(東京都の里親認定基準の詳細はこちら)。都内の全世帯数から単身世帯を除くと352万世帯あまりですが(平成 29 年度[3])、それに対して里親登録は 793 世帯しかないということです。
身の回りに里親登録している人がおらず、メディアでの取り上げも少ないことが、里親の馴染みのなさにつながり、馴染みがないから里親登録が増えず…という悪循環の構図があるようです。
国は里親委託を推進
厚生労働省は、児童相談所が保護した子ども等について、児童養護施設・乳児院への委託を減らし、里親委託を増やすという数値目標を掲げています[4a,4b]。これを受けて東京都は、里親委託を増やすことを盛り込んだ計画を2019年度中に策定する予定です[5]。今回の調査は計画策定にあたって基礎資料を得るために実施されました[1]。
今回の調査結果の詳細は東京都福祉保健局のホームページにて公開されています[1]。
参考文献
- [1] 東京都福祉保健局「令和元年度 東京都里親制度に関する都民・企業向け調査について」2019年11月26日閲覧( リンク )
- [2] 東京都福祉保健局「福祉・衛生統計年報(平成29年度)」2019年11月26日閲覧( リンク )
- [3] 東京都総務局「東京都統計年鑑 平成29年度」2019年11月26日閲覧( リンク )
- [4a] 厚生労働省 新たな社会的養育の在り方に関する検討会「新しい社会的養育ビジョン」平成29年8月2日付、2019年11月26日閲覧( リンク )
- [4b] 厚生労働省子ども家庭局「「都道府県社会的養育推進計画」の策定について」平成30年7月6日付、2019年11月26日閲覧( リンク )
- [5] 東京都福祉保健局「児童福祉審議会専門部会テーマ」(東京都児童福祉審議会専門部会 第1回 資料2)平成31年2月18日開催、2019年11月26日閲覧( リンク )
社会で子育てドットコム編集部
「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。
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