児童養護施設で迎えるお正月――子ども達に伝えていきたいこと

NPO法人ライツオン・チルドレンでは2019年11月に助成事業を行い、東京の児童養護施設から「実現したいストーリー」を募集し、3つのストーリーを採択しました。
今回はそのうちの1件について、記事にしてお届けします(記事中 敬称略)。

「子どもに日本の伝統的な行事を伝えていくと同時に、施設で楽しいお正月を迎えるために、お正月におせち料理を購入する」

このストーリーを応募して下さったのは、東大和市にある児童養護施設れんげ学園です。

助成金は施設の子どもたち全員分のおせち料理の購入に充てられました。
お正月の様子を職員の方にレポートして頂いたので、一部改変してご紹介します。

 2020年元日。れんげ学園の入所児童のほぼ全員が家族や親族の元へ帰省することはなく、施設でお正月を迎えることとなりました。

 子ども達は大晦日にカウントダウンをして、普段はなかなかできない夜更かしを楽しんでいました。近くにある法人のお寺へ、除夜の鐘をつきに行った子もいました。そのため、1日の朝はいつもよりゆっくりと起床しました。


写真提供:児童養護施設 れんげ学園

 1日の午前中は全員で初詣に行きました。おせち料理は昼食にみんなで頂く予定だったので、朝からキッチンに用意していました。起きて来た子ども達はすぐにおせち料理のお重を見つけて、「これなあに?」「朝ごはんに食べるの?」「ちょっとだけ開けてみてもいい?」と、普段見慣れない重箱に興味津々の様子でした。

 初詣から戻って来て、いよいよお待ちかねのお昼ご飯。お重の蓋を開けてみて、子ども達はきれいに盛り付けられた料理を指差し、「これは何でできてるの?」「甘いのはどれ?」と職員を質問攻めにしました。職員からは、おせち料理の由来や、料理の一つひとつに込められた願いを説明しました。


写真提供:児童養護施設 れんげ学園

 食べ始めてからも質問は止まらず、「これ、なんだか分からないけど食べてみる!」と、好き嫌いが多い子が自ら挑戦してみたり、殻つきのえびの殻を殻ごとバリバリと食べてしまった子がいたりと、にぎやかで楽しい食事になりました。


写真提供:児童養護施設 れんげ学園

 お重に入った綺麗で豪華なおせち料理が食卓に上がったことで、子ども達はお正月を特別な日と感じ、日本の伝統行事としてのお正月を改めて知ることが出来たと感じました。

お正月も施設で

児童養護施設は、様々な事情で親と暮らせない子どもたちを児童相談所から預かっています。
概ね2歳から18歳程度までの子どもたちが、職員の世話を受けながら生活しています。

れんげ学園では、以前はお正月に子どもが親や祖父母・親戚の家などに一時帰宅(外泊交流)することが多かったといいます。
しかし最近は9割近くの子どもがお正月も帰宅できず、施設で新年を迎えているということです。

その背景には何があるのでしょうか。
厚生労働省は、全国の児童養護施設に子どもが入所した「主な理由」に関する調査を実施しています[1a,1b]。
それを見ると、昭和から平成にかけて「虐待」の増加が著しく、「父・母の精神疾患」も増えてきたことがわかります。

虐待による入所の場合、児童相談所が親と子どもの交流を制限することが少なくありません。
また、仮に親族が子どもと交流できる状況にあったとしても、実親の心情に配慮して、踏み込んだ交流を控える場合もあります。
ある社会的養護関係者は「虐待で保護される子どもが増えたことと、ほとんどの子どもがお正月もずっと施設にいるという光景は密接につながっている」と指摘します。

子どもたちに伝えていきたいこと

「おせち料理は日本の伝統的な料理です。ひとつひとつの料理に由来があり、子ども達に伝えていきたい“食育”の要素がたくさんあります。
将来子ども達が自分の家庭を持った時、今回のような経験が生きてくればいいなと思います。」(れんげ学園職員)

れんげ学園では、これまでお正月のおせちは基本的に職員が調理してきたそうです。
国や自治体の予算配分により、近年は1人の職員が4人から8人の子どもの世話をするという体制になっています。
「今年はお雑煮とちょっとした料理を作るだけで、職員も子ども達とゆっくりとお正月の食事を楽しむことができました。」(れんげ学園職員)

ちなみに、おせち料理に生ものがなく保存食が多いのは、普段忙しい主婦が休めるようにするため、との説もあるようです[2]。

お正月のお祝いに限らず、季節の行事などは、子どもの間に1回でも経験しておくことが大切だと思います。
子どもたちが将来、施設を出て自立した後も、施設でお正月をお祝いした経験が何かの糧になってくれていたらと思います。

GOODS for GOOD について

NPO法人ライツオン・チルドレンの「GOODS for GOOD 助成 2019」では、東京の児童養護施設から「助成金を使って実現したいストーリー」を募集しました。
助成資金は、ライツオン・チルドレンの支援企業であるドイツ銀行グループ様が、社内でチャリティバザーを開催して調達して下さいました。
選考はドイツ銀行グループ内の有志メンバーが担当しました。

「GOODS for GOOD 助成 2019」の採択結果については、こちらの記事をご覧ください:
「東京の児童養護施設に向けた助成公募を行い、3件の応募を採択しました(GOODS for GOOD 助成 2019)」

参考文献

社会で子育てドットコム編集部
社会で子育てドットコム編集部

「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。