体罰の定義は?――「体罰によらない子育て」指針の案がまとまる

厚生労働省の有識者会議は、「体罰等によらない子育て」に関する指針の素案をまとめ、大筋で了承しました。
これは、2020年4月から保護者による体罰が法律で禁止されるのを前に、「体罰」の定義や「しつけ」との違いについて整理したものです。
NHKニュースなど報道各社が伝えました[2a-2g]。


画像はイメージ。/ 社会で子育てドットコム(Photo by kieferpix/iStock

2019年6月に成立した児童福祉法等の改正法において、保護者による体罰の禁止が法律に盛り込まれ、2020年4月1日から施行されることになっています[3]。
禁止される「体罰」の定義が不明確だとして、厚生労働省の有識者会議が体罰の範囲などを議論してきました。

今回まとめられた指針の素案[1]は、「法律が変わったことはゴールではなく、これから、一人ひとりが意識して社会全体で取り組んでいく」必要があると呼び掛けています。

「体罰」の定義

今回の素案では、体罰を「身体に何らかの苦痛又は不快感を引き起こす行為」としています。
「たとえしつけのためだと親が思っても」、「どんなに軽いものであっても」該当すれば法律で禁止されるとしています。

素案では体罰の例も挙げられています。

  • 口で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
  • 大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
  • 友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
  • 他人のものを盗んだので、罰としてお尻を叩いた
  • 宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった

ただし、罰を与えることを目的としない行為は体罰に該当しないとしています。
子どもを保護する目的(道に飛び出しそうな子どもの手を掴む等)や、第三者に被害を及ぼすような行為を制止する目的(他の子どもに暴力を振るうのを制止する等)の行為であれば、体罰には該当しないということです。

「しつけ」とどう違うか

「しつけ」と「体罰」はどう区別すればいいのでしょうか。

素案では、しつけとは「子どもの人格や才能等を伸ばし、社会において自律した生活を送れるようにすること等」を目的に、「子どもをサポートして社会性を育む行為」としています。

子どもにしつけをするときには、例えば言葉で伝える、見本を示すなど、子どものレベルに合わせて、本人が理解できる方法で伝える必要があるとしています。
一方、体罰で押さえつける方法は、しつけの目的に合わないとしています。

素案は体罰による子育てについて次のように記し、「体罰は必要ない」と明言しています。

体罰によって子どもの行動が変わったとしても、それは、叩かれた恐怖等によって行動した姿であり、自分で考えて行動した姿ではありません。子どもの成長の助けにならないばかりか、心身の発達等に悪影響を及ぼしてしまう可能性があり、子どもの健やかな成長・発達において、体罰は必要ありません。

「体罰」と「虐待」

体罰を禁止する法改正が実現した背景には、相次ぐ子どもの虐待死事件で親が「しつけ」の名目で子どもを暴行するなどしていたことがあります。

素案では、「体罰は身体的な虐待につながり、さらにエスカレートする可能性」があると記されました。

「お前なんか生まれてこなければよかった」という暴言や無視なども、子どもの心を傷つける行為で、子どもの権利を侵害しているとしています。

体罰がいけない理由

体罰がいけない理由として、素案は「子どもへの悪影響」と「子どもの権利」を挙げています。

このうち子どもへの影響については、これまでの研究結果に触れながら、「虐待や体罰、暴言によるトラウマ体験は、心身にダメージを引き起こし、その後の子ども達の成長・発達に悪影響」があるとしています。

子どもの権利については、児童福祉法や「子どもの権利条約」などで基本的な理念や原則が定められています。
素案は、子どもの「心身ともに健やかに成長・発達する」権利などを保障するうえで、体罰等によらない子育てを推進する必要があるとしています。

一方、すでに虐待や体罰・暴言によるトラウマ体験でダメージを受けた人でも、「その後の周囲の人々の支援や適切な関わりにより、悪影響を回復し、あるいは課題を乗り越えて成長する」という研究結果[4]も紹介しています。

保護者はどうすればいいのか

では、子育て中の保護者はどうすればいいのでしょうか。
素案は、「体罰等によらない子育て」のための工夫のポイントを挙げています。

〈1〉子どもと接する上では…

  • 子どもの気持ちを受け止める、気持ちや考えを聞く
  • 行動に注目して、肯定的・具体的に話す
  • 良いこと、望ましいことをしたら褒める
  • 一緒にする、リハーサルをする、お手本になる
  • 注意をそらす、モチベーションをあげる

〈2〉親自身について…

  • 環境を整える
  • 発達段階を理解する
  • 家事の分担、時間の使い方などを見直す
  • クールダウンの方法を見つける

〈3〉保護者が一人で抱え込まない(で済むよう社会全体で支える)

※詳しくは指針の素案[1]に平易な文体で書かれています。

体罰は法律で禁止されますが、体罰をした保護者に罰則が設けられているわけではありません[3]。
今回の素案も、保護者を罰したり追い込んだりする意図はないとしています。

素案は、保護者だけでなく社会全体に向けて、次のように呼びかけています。

法律が変わったことはゴールではなく、これから、一人ひとりが意識して社会全体で取り組んでいく必要があります。
子どもが健やかに成長・発達するためには、体罰等に対する意識を一人ひとりが変えていかなくてはなりません。同時に、保護者が子育てで孤立しないように、社会全体で子育てを行っていく必要があります。

今後の見通し

「体罰等によらない子育て」については、厚生労働省が12月中にもパブリックコメントを実施し、それを踏まえて有識者会議が2019年度内に最終的な指針を策定するということです。

また、親が子を戒めることができるとする民法の「懲戒権」規定については、改正法の施行から2年を目途に、規定の削除も含めた議論が続けられています[5]。

参考文献

社会で子育てドットコム編集部
社会で子育てドットコム編集部

「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。