東京・目黒区で、5歳の女の子に十分な食事を与えず死亡させたなどとして両親が逮捕された事件で、虐待の詳しい内容が連日報道されています。

写真はイメージ。/ Copyright 2018 社会で子育てドットコム All rights reserved. Based on the photo by serenestarts, posted on Pixabay (CC0)
これまでの報道
6月6日のFNN PRIME より、事件の現場となった自宅から見つかった結愛ちゃんのノートの内容の一部を引用します。
ママ もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから きょうよりかもっと あしたはできるようにするから
もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします
ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして
きのうぜんぜんできなかったことこれまでまいにちやってきたことをなおす
これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめる もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします
もう あしたはぜったいやるんだぞとおもって いっしょうけんめいやる やるぞ
子ども虐待は密室で起こるため、虐待の実態を詳細かつ客観的に示すのは難しいとされます。しかしこの事件では結愛ちゃん自身によるノートが残されており、警視庁がその内容を公開したことで、私たちは虐待による結愛ちゃんの痛みの一端を知ることができました。
この事件をめぐっては、警察が捜査の中で把握した虐待の内容が「捜査関係者の話」として毎日少しずつ報道で明らかにされてきました。
以下に、NHKニュースなどで報じられた虐待のあらましをまとめました(6月14日更新)。いずれも警視庁または捜査関係者への取材でわかった、とされているものです。
- 自宅アパートから見つかったノートには、結愛ちゃんが起きた時間を書いていて、毎朝自分で目覚ましを鳴らして朝4時前後に起きていたと見られる。また、ノートには「はをみがいた」などと行動の記録を書いていた。
- 結愛ちゃんは両親と弟とは別の部屋で1人で寝起きしていたが、結愛ちゃんの部屋には電灯がなかった。窓の外の明かりを頼りにノートにひらがなの練習をするなどしていたとみられる。
- 結愛ちゃんの一家は香川県に住んでいたが、仕事のため雄大容疑者だけ2017年12月に都内に移り、その翌月、結愛ちゃんと優里容疑者らも転居してきた。その際、雄大容疑者が久しぶりに会った結愛ちゃんに「太った」と指摘し、自分で体重を測ってノートに記録させるようになった。結愛ちゃんは2018年1月の健康診断では16.6キロで、5歳の女の子の平均体重と比較しても太っていなかったものの、2か月後に死亡した時にはさらに痩せて12.2キロになっていた。
- 結愛ちゃんの食事は1食につきスープ1杯か、おわんに半分のご飯とみそ汁などしか与えられていなかった。
- 自宅アパートからは「いきがきれるまでうんどうする」「ふろをあらう」など20項目近くのルールが書かれた段ボールが見つかっていた。両親のどちらかが書いたとみられる。
- 父親は今年の冬、結愛ちゃんを自宅のベランダに放置したり、暖房のきいていない部屋で長時間過ごさせたりしていた。結愛ちゃんの足の裏にはしもやけがあった。
- 結愛ちゃんが東京に引っ越してきたあとの1か月余りの間、ほとんど外出していなかった。
- 警視庁が結愛ちゃんの遺体を調べたところ、免疫の機能に関わる臓器の「胸腺」が通常の5分の1程度に縮んでいたことがわかった。この臓器の萎縮は、繰り返し虐待を受けた子どもにみられる特徴とのこと。
- 結愛ちゃんは3月2日に死亡する数日前、食事を与えようとした母親に「もうご飯を食べられない」と話した。衰弱で食事を飲み込めなくなっていたとみられる。
- 結愛ちゃんが死亡して事件が発覚した当時、父親は「小学校の入学に向けた勉強を先にやれと言ったら『はい』と言っていたのに、昼ごろに部屋を確認したら寝ていたのでかちんときて暴行した」と供述していた。最初の逮捕の容疑は傷害だった。
- これまでの調べに対し、両親はいずれも容疑(保護責任者遺棄致死)を認めていた。父親は「しつけのつもりでやった」と供述、母親は逮捕前の調べに「自分の立場が危うくなることを恐れて見過ごしていた」と話した。
- 母親は2017年に香川県の児童相談所と面談し、虐待に詳しい専門の病院に通院していたが、そのころ「最初は夫のしつけが厳しすぎると感じていたが、子どもがそれまでできなかった礼儀作法ができるようになっていくのを見て、これでいいと思うようになった」と話していた。
以下のリストは、この事件に関するNHKニュースWEBの見出しを抜き出してきたものです(6月14日更新)。毎日少しずつ新たな情報が報じられ、この事件のニュースが米朝首脳会談などの他のニュースにかき消されることなく、長く取り上げられ続けているようすがわかります。
- 6月6日 「もうおねがい ゆるしてください」死亡した5歳女児のノート(NHKニュース)
- 6月6日 両親「虐待発覚恐れ病院行かず」(NHKニュース)
- 6月7日 死亡の5歳女児 部屋に閉じ込められた状態か(NHKニュース)
- 6月8日 「勉強せず寝ていたので暴行」5歳女児死亡事件 父親が供述(NHKニュース)
- 6月8日 死亡の5歳女児 電灯もない1人の部屋で「ゆるして」つづる(NHKニュース)
- 6月9日 5歳女児死亡 免疫機能の「胸腺」萎縮 長期間の虐待ストレスか(NHKニュース)
- 6月11日 5歳女児死亡「いきがきれるまでうんどう」20項目近くのルール(NHKニュース)
- 6月13日 父親「太った」と体重記録させ虐待エスカレートか(NHKニュース)
- 6月13日 「お腹いっぱいご飯食べさせたい」5歳女児死亡 現場で悼む人(NHKニュース)
虐待死に至る経緯
結愛ちゃんの虐待死をめぐる経緯を、報道各社が捜査関係者の話などとして6月14日までに伝えた内容に基づいてまとめました。
この件で、父親が傷害の疑いで書類送検
父親を再び傷害の疑いで書類送検
このころ健康診断で結愛ちゃんの体重は16.6キロ。この頃から虐待がエスカレートか
さまざまな反省点、再発防止策があると思われますが、特に「都道府県をまたいだ児童相談所の連携」「児童相談所と警察の連携」の2点に注目が集まっているようです。
NHKニュースによると、香川県の児童相談所は、「父親だけでなく、母親への指導をきちんとしなければならかったと感じている。もっと両親に面会する回数を増やして指導を行うべきだった」と話しています。一方、引き継ぎを受けた東京の児童相談所は、「香川から引き継がれて虐待のリスクが高いかどうか、判断している最中に事件が起きた。今後、対応が適切だったか調査していきたい」としています。
なお、児童相談所は慢性的な人手不足の状態にあり、この事件に関係する児童相談所に電話でクレームを伝えると、児童相談所の通常の業務に支障をきたし、他の子どもを助けられなくなるおそれもある点に十分留意をしてください。
あなたにできること
子ども虐待と思われる事案があるとき、あるいは子育てに悩みがあるときは、児童相談所全国共通ダイヤル「189」(いち・はや・く)に電話をしてください。24時間対応で、虐待の通告や育児の相談ができます。

児童相談所全国共通ダイヤル
子ども虐待と思われる事案があるときは、警察でも相談を受け付けています。

社会で子育てドットコム編集部
「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。
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