上川陽子法務大臣は6月4日、法務大臣の諮問機関である法制審議会に、特別養子縁組制度を見直す民法改正を諮問しました。時事通信、毎日新聞などが報じました。議事録・配布資料は法務省のこちらのページから閲覧できます。
特別養子縁組は、生みの親と暮らせない子どもを、血のつながりのない夫婦が法律上の実子とする制度。通常の養子縁組とは異なります。
虐待や経済的な事情などで生みの親と暮らせない子どもたちに、なるべく家庭的で安定した養育環境を提供するため、特別養子縁組の制度をより活用していくことが考えられます。厚生労働省の有識者会議は2017年の報告書で、特別養子縁組の制度的な限界を見直し、制度の利用を推し進めるべきと提言しました。
特別養子縁組をするためには、子どもが原則6歳未満、例外でも8歳未満でなければならないと法律で定められています。今回の諮問により、この対象年齢を引き上げるかどうか、引き上げるとしたら何歳までとするか、が検討されることになります。
法務省などが昨年7月に設けた有識者研究会がこの対象年齢について議論を続けてきましたが、12歳未満、15歳未満の2つの案を軸に報告書の取りまとめに入ったとの報道がなされています。共同通信などが報じました。この有識者研究会での議論が、今回始まった法制審での議論にもある程度は反映されるとの見方が出ています。
また、特別養子縁組の成立には生みの親の同意と家庭裁判所の審判が必要となっています。生みの親が同意しない、もしくは手続きの途中で同意を撤回すると、特別養子縁組はできないことになります。この生みの親の同意がどこまで必要かについても、法制審で検討課題となる模様です。
1988年に特別養子縁組の制度が導入されて以降、見直しは一度もなく、初めての制度見直しへ向けて、法律の見地から議論が進んでいくことになります。
社会で子育てドットコム編集部
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