目黒区の女児虐待死事件、都と香川県の検証結果がまとまる

東京都目黒区で5歳の女の子、船戸結愛(ゆあ)ちゃんが虐待死した事件について、東京都と香川県が合同で児童相談所などの対応を検証し、結果をまとめました。
都と香川県の児童相談所の間に認識のズレが生じたこと、「48時間以内の安全確認」など所定の手続きがとられなかったことなどが問題点として指摘されました。
NHKニュースなど報道各社が伝えました。


画像はイメージ(図は東京都児童審議会の検証報告書[1]に基づく)。/ Image by 社会で子育てドットコム.

女の子は2018年1月まで香川県善通寺市で家族と暮らしており、東京都目黒区に引っ越した直後の3月に自宅で亡くなりました。
この事件への対応については、すでに厚生労働省の委員会が検証報告をまとめています
今回の検証では東京都と香川県の検証会議が情報を共有し、合同で会議を開くなどして進められたということです。自治体間にまたがる子ども虐待事例について、複数の自治体が合同で検証を行ったのは初めてだということです。

認識のズレ

都の報告書によると、香川県の児童相談所(児相)が児童福祉法に基づく指導(児童福祉司指導)の継続が必要だと考えていたにも関わらず、都の児相には緊急性が高いケースとして伝わっていませんでした。

目黒区を管轄する品川児相は、1月末に香川県の児相から転入の電話連絡と2枚のファクスを受理し、これをもとに女の子のケースを「虐待ケース」と判断したということです。

しかし、転居前に保護者への指導が解除されていたことから、品川児相は被虐待児の引き継ぎに関する全国ルールに沿った引き継ぎではなく、すでに終結した事案に関する「情報提供」と受けとめていました。
さらに、香川県の児相が提供した情報には「けが自体は軽微」との記述があり、けがの写真は添付されておらず、保護者への指導の継続が必要との考えも明記されていませんでした。
香川県の報告書では、引き継ぎ資料が不十分であった点などが問題として指摘されているということです。

品川児相はこうした点を踏まえて、保護者との関係作りを優先していました。
都の報告書は、双方の児相で認識がズレていたことを問題点として指摘しました。

また、香川県警は一家の転居先が決まれば通知するよう香川県の児相に求められていたにもかかわらず、通知がされていなかったということです。

安全確認などのルール

厚生労働省の「児童相談所運営指針」[2]では、児相は虐待の疑いを把握してから原則48時間以内に子どもを目視して安全確認を行うことになっています。ただし、この48時間ルールは「他の関係機関によって把握されている状況等を勘案し緊急性に乏しいと判断されるケース」は除く、とされています。

品川児相は1月30日に緊急受理会議を開いて、女の子の事例を虐待ケースと判断し、女の子一家が目黒区に転入したことも確認していました。
しかし、女の子の自宅を家庭訪問したのは2月9日になってからで、母親が女の子との面会を拒否したにも関わらず、再訪問をしていませんでした。

目黒区の子ども家庭支援センターでは、女の子一家が住んでいた香川県善通寺市からの情報提供を受け、目黒区の女の子の自宅を家庭訪問する予定でした。
しかしこの予定を2月1日に知らされた品川児相は、「児相が先に訪問する」として、区は待つよう指示していたということです。

また、虐待受理後72時間以内に「リスクアセスメントシート」を作るという都のルールが守られず、品川児相はリスクの再評価をせずに「緊急性は高くない」との見立てで対応を続けたということです。

今後への提言

都の報告書は、被虐待児の転居にあたっては、児相が「児童相談所運営指針」や「全国ルール」に基づいた手続・移管を徹底すること、関係機関が情報共有を徹底することなどを提言しています。
また引き継ぎ後の対応については、「子どもの命を守るために受理後48時間ルールが設定されている」とし、「『子どもに会えない』という事実が最大のリスク要因である」と考えることが重要であるとしています。
国に対しては、「児相職員の専門性向上のための方策を図ること」を要望しています。

また香川県の報告書は、県に対して児童相談所の体制強化や関係機関との連携強化などを提言したということです。

国は7月に「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」を発表し、児相同士の情報共有の徹底、児相と警察の情報共有の強化などを打ち出しています[3]。
都は9月に子どもの安全確認の強化を打ち出し、虐待の疑いを把握してから48時間以内に安全確認できない場合、原則として立ち入り調査を行うことを決定するとともに、警視庁との情報共有の対象も拡充しています[4]。

参考文献

  • [1] 東京都児童福祉審議会「児童虐待死亡ゼロを目指した支援のあり方について 平成30年度東京都児童福祉審議会児童虐待死亡事例等検証部会報告書(平成30年3月発生事例)」平成30年11月14日( リンク
  • [2] 厚生労働省「児童相談所運営指針」平成30年7月6日( リンク
  • [3] 厚生労働省「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策のポイント」平成30年7月( リンク
  • [4] 東京都福祉保健局「児童相談体制の強化に向けた緊急対策」平成30年9月( リンク
社会で子育てドットコム編集部

「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。