「児童福祉司を2,000人増員」がどれくらいの増員かをグラフで確認

東京都目黒区で5歳の女の子が虐待死した事件を受け、政府は7月20日、児童虐待防止の緊急対策をまとめました
NHKニュース共同通信など報道各社が伝えました。
対策案の目玉のひとつは、児童相談所(児相)の専門職である「児童福祉司」を2022年度までに2,000人増員することです[1]。

そもそも児童福祉司とは

「児童福祉司」は児童相談所に勤め、以下の4つを主な仕事としています[2]。

  1. 子ども、保護者等から子どもの福祉に関する相談に応じること
  2. 必要な調査を行い、子どもや保護者等の置かれている環境、社会資源の活用の可能性等を明らかにし、どのような援助が必要であるかを診断すること
  3. 子ども、保護者、関係者等に必要な支援・指導を行うこと
  4. 子ども、保護者等の関係調整(家族療法など)を行うこと

家庭への立ち入り調査や子どもの一時保護も業務に含まれます。
また、虐待事案への対応だけでなく、非行への対応や、子育て世帯からの相談対応、特別養子縁組の手続きに関する対応も担っていて、業務範囲は多岐にわたります。

現行の配置基準は人口4万人につき1人以上を基本とし、子ども虐待対応の発生率が高い地域には上乗せを行うことになっています[3]。
2017年4月1日時点で全国に配置された児童福祉司の数は3,253人です。

児童相談所の児童福祉司配置数と今後の目標

国が新たに策定するプランでは、専門職である児童福祉司を4年かけて現状の1.6倍に増やすとしています。

出典:
厚生労働省「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策のポイント」平成30年7月[1]
厚生労働省子ども家庭局「児童相談所の現状」第6回 子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ 参考資料3、平成29年3月14日[3]

※児童福祉司の配置数は各年度の4月1日時点。

しかし、児相を設置している 69 自治体を個別にみていくと、「4万人につき1人」の最低基準を満たせているのは 19 の自治体にとどまっていたということです[4]。

虐待件数の伸びとの比較

2017年度に3250人ほどいた児童福祉司を、2022年度までにさらに2,000人増やすという今回のプランの方針ですが、単純に人数にだけ注目して、児童虐待件数の伸びと比べてみましょう。

それでも虐待対応件数の伸びには程遠い

国が新たに策定するプランの通りに児童福祉司の配置が進んだとしても、子ども虐待件数の急激な伸びには追い付けそうにありません。

出典:
厚生労働省「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策のポイント」平成30年7月[1]
厚生労働省子ども家庭局「児童相談所の現状」第6回 子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ 参考資料3、平成29年3月14日[3]

※児童相談所における児童虐待相談件数は行政福祉報告例による。2010年度は福島県を除く。
※児童福祉司の配置数は各年度の4月1日時点。

もちろん数がすべてではありませんが、子ども虐待の件数の伸びに比べて増員幅はかなり小さいことがわかります。

児童福祉司になるための要件

人数ではなく専門性にも注目してみましょう。
児童福祉司は児童福祉法で定められている資格ですが、国家資格ではありません(任用資格)。

児童福祉司になるための要件は大きく分けると以下の5通りとなっています。

  1. 専門の養成課程を修了する
  2. 医師、社会福祉士や精神保健福祉士などの専門資格を持っている
  3. 大学・大学院で心理学など専攻したうえで1年の実務経験を積む
  4. 保育士、児童指導員、保健師などの関連資格をとったうえで1~2年の実務経験を積む
  5. 大学で社会福祉概論など指定の科目を3つ以上履修して卒業したうえで、社会福祉主事として一定の職務経験を積む

児童福祉司の仕事には福祉、法律、心理学など様々な分野の見識が必要で、児童福祉司になった後に5~10年の経験を積んでようやく一人前ともいわれているようです[4]。

4年間で2,000人という過去最大の増員を目指すとき、十分な養成体制が確保できるのかどうかがポイントのひとつになりそうです。

児相の強化プランは、年末までに策定され、2019年度から実施されるとのことです。

参考文献

  • [1] 厚生労働省「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策のポイント」平成30年7月( リンク
  • [2] 厚生労働省「児童相談所運営指針」平成30年7月6日( リンク
  • [3] 厚生労働省子ども家庭局「児童相談所の現状」第6回 子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ 参考資料3、平成29年3月14日( リンク
  • [4] 毎日新聞「政府の虐待防止策 児童福祉司1.6倍に…2000人増員」2018年7月20日( リンク
社会で子育てドットコム編集部

「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。