地域に開かれた対話の場を――児童養護施設 二葉むさしが丘学園「オープンカフェ」の取り組み

今回は、東京都小平市にある児童養護施設 二葉むさしが丘学園の施設長 菅原淳史さんと自立支援・地域連携コーディネーター 竹村雅裕さんにインタビューをさせていただきました。

二葉むさしが丘学園は小平市にある児童養護施設で、2015年から「オープンカフェふたば」という取り組みをされており、児童養護施設や里親などについて発信し、参加者も巻き込みながら話し合う場を作ろうと取り組まれてきました。
今回はライツオン・チルドレン理事長の立神を「オープンカフェ」のゲストに呼んでいただいたご縁で、カフェが始まる前にお時間をいただき取材をさせていただきました。


二葉むさしが丘学園の正門。門の向こうに見えるベンチと体育館は地域に開放されているとのこと。/ Copyright 2018 社会で子育てドットコム

オープンカフェのようす

2018年7月のオープンカフェは、「”社会”的養護の仕組みづくり~企業と施設をつなげる取り組み~」のテーマで、ライツオン・チルドレン理事長の立神をゲストに呼んでいただきました。


2018年7月のオープンカフェのようす。このインタビューの聞き手・立神がゲストとしてお話をさせていただきました。/ Copyright 2018 社会で子育てドットコム

オープンカフェは昼の開催が多いそうですが、今回は19時スタートでした。
会場は二葉むさしが丘学園の2階にある会議室です。
オープンカフェの名前の通り、誰でも参加できますが、参加には事前申込が必要です。今回は学生、地域の方、児童養護施設でボランティアをされている方、市議会議員の方など、15名程度が参加されました。
カフェという事で、全員にドリンクと軽いスナックが提供されます。

この記事でインタビューに答えてくださった竹村さんが司会進行を務め、まず二葉むさしが丘学園とオープンカフェについて簡単に紹介がありました。
その後ゲストの立神から、ライツオン・チルドレンのパソコン講習会企業内セミナーなどの取り組みを紹介させていただきました。
予定より時間が押してしまったのですが、少し休憩を挟んだ後、質疑応答タイムに。学生さんや市議の方などから、それぞれの視点で質問をいただきました。

20時半すぎに終了しましたが、その後も参加者の方が個別にゲストの立神や施設職員と情報交換をしていました。
また、学生さんには施設長の菅原さんが話しかけて、施設での仕事内容などについてフォローしておられたようです。

そんなオープンカフェについて、二葉むさしが丘学園のお二人にお話を伺いました――
聞き手:立神由美子(NPO法人ライツオン・チルドレン
編集:石井宏茂(NPO法人ライツオン・チルドレン
※以下、敬称略

「知られていない」という現状


自立支援・地域連携コーディネーターの竹村さん。オープンカフェを27回にわたって企画してきました。/ Copyright 2018 社会で子育てドットコム

――まずは、オープンカフェを始めたきっかけからお伺いします。

竹村「何がきっかけだったか…もともとのきっかけとしては、自分自身がケア職員として特別支援の子を担当していたときに、PTAの保護者会と言うか、茶話会のような場に参加させていただいたんですが、初めて参加したとき他の保護者の方々にすごい驚かれたんですね。最初は『大卒で入りたての若い男性が何でこんなところにいるんだ』みたいな目で見られてるのかなとも思ったんですが(笑)、よく聞いてみると児童養護施設の職員がこういう場に参加したのが初めてで、それで驚かれていたんですね。それで、『施設の中で子どもたちはどんな生活をしてるの?』とか、『ご飯とかどうなってるの?』とか、いろいろと聞かれまして。僕はこの時、児童養護施設が全然知られていないということに驚かされました。
地域の人、保護者の人が児童養護施設のことを全然知らないし、下手をすると勘違いして障害児施設と思われてたり、悪いことをした子どもが入っている施設だと思われていたり…。そういう環境の中で施設の子どもたちが育っていくのはどうなのかな、というモヤモヤはずっとありました。」

――児童養護施設は「さまざまな事情で親と一緒に暮らせない子どもが生活する施設」という基本的な情報でさえ、まだまだ世間に認知されていませんね。

竹村「そんな中、目黒若葉寮さん(目黒区にある児童養護施設)で『オープンハウス』という取り組みが始まったと聞いて、見学に行きました。これはいい取り組みだな、うちでもちょっとやってみようか、ということで二葉むさしが丘学園の「オープンカフェふたば」が2015年6月に始まりました。

オープンカフェのねらいは地域の人に知ってもらうことがまず1点ですが、二葉むさしが丘学園ではたくさんのボランティアさんを受け入れていて、ちょうど僕がその時ボランティア担当をしていたので、ボランティア活動のオリエンテーション(説明会)も同時にやってしまおうと。
あとはちょうどそのころ「里親支援専門相談員」が各地の児童養護施設に配置されて、児童養護施設が里親関連の相談を受け付けることになったので、里親関連のお話をさせていただく場としてもオープンカフェを位置付けていました。」


2018年7月のオープンカフェのようす。/ Copyright 2018 社会で子育てドットコム

ゲストと参加者

――カフェは1~2ヶ月に1度開催されていて、毎回、施設から里親、養子縁組までいろいろなテーマを設定して、ゲストを呼ばれていますね。

竹村「本格的にゲストを呼び始めたのは2年目からです。うちでボランティアをしてくださっている方をゲストに呼んで、ボランティア説明会も兼ねてやったのが最初のきっかけになって、ゲストスピーカーを呼ぶ流れができてきました。

2年目以降は、施設と里親のことをもっと知ってもらう意味で、「施設のことを話す回」と「里親のことを話す回」を分けて、それぞれ何回かやろうねという話をしていました。

例えば施設についての回ではうちの卒園生をゲストに呼んだこともありますし、里親制度の説明の回は里子として育てられた当事者の方をお呼びしたこともありました。
就職説明会的な位置づけの回は若手職員に喋ってもらいます。「特別支援学校からの自立」というテーマのときは、うちの卒園生で特別支援学校出身の人と、LITALICO(障害児/者向けの教育・就労支援などを全国で手掛ける企業)の方をお呼びしました。「学習支援」をテーマにした回は、その分野で活躍しているNPO法人3Keys 代表理事の森山誉恵さんにお話をしていただきました。」

――オーディエンスのほうは、どういった方が参加されているんでしょうか。

竹村「今回(2018年7月)で27回目の開催ですが、これまでにのべ300名を超える参加者がありました。
都内各地から参加者がいますが、地元地域の人が多いですね。一番来てほしいのはこの近所の人です。
あとは社会的養護(児童養護施設を含めた要保護児童へのケア)に関心のある学生さん、社会的養護関連のNPOでボランティア活動をされている方ですね。
地域の企業の方にも来ていただけたらいいなとは思っていますが、今のところ参加はあまりないです。

1年目までのオープンカフェは、どの回もほぼ同じような話をしていたんですが、本格的にゲストを呼ぶようになった2年目以降は毎回内容が違うので、参加者にリピーターが増えました。結構な頻度で来てくださっている方もいます。
時間さえあれば、ゲストだけじゃなくて参加者みなさんにコメントをいただくようにしています。トーク合間の休憩時間には、同じテーブルの参加者同士でお話しをされて、そこでまた新しいつながりが生まれたりとか。」


オープンカフェの会場にて。カフェということで、飲み物と軽いスナックが提供されていました。/ Copyright 2018 社会で子育てドットコム

――カフェは事前申込制ですが、告知は主にホームページですか?

竹村ホームページブログ、それとTwitterFacebook、あとは建物の外の掲示板に貼ったりとかです。
昼間に開催することが多いですが、今回(2018年7月)のように夜に開催することもあります。

――ちなみに、二葉むさしが丘学園の広報・渉外の体制ってどうなっているんでしょう。

菅原「うちの広報担当の仕事はケア職員などに(兼業で)割り振ってあるんですが、あくまでブログの更新とか『学園だより』の発行をするための係であって、発信した後の展開とか広がりまでは担当することになっていないんです。
竹村「ホームページは去年、知り合いのWebデザイナーの人にお願いして新しいものを作っていただきました。」

――児童養護施設は「地域の子育て支援」を任される方向性にありますが、一方で広報業務もホームページも行政からの予算にはまだ含まれていませんよね。やりくりに苦心しているのはどこの施設も同じなんでしょうね。


今回の「オープンカフェ」で参加者に配布された資料。二葉むさしが丘学園のパンフレットなど盛りだくさん。/ Copyright 2018 社会で子育てドットコム

児童養護施設が「隠れて」いた時代


オープンカフェで挨拶する菅原施設長。/ Copyright 2018 社会で子育てドットコム

菅原「歴史的に児童養護施設って、施設内のことは外部に出さないっていう文化が昔はあったんです。そこに児童養護施設があることすら隠す、それが当たり前の時代があって。
私が以前いた都内の施設でも20数年前、建て替えのときに、施設名を道路から見える場所に掲げるかどうかで結構な議論があったんですよ。
そういう文化が残ってる施設は、東京ではどんどん少なくなってますけど、地方では東京より多いんじゃないかなと思います。」

――偏見を恐れて隠していた、ということだと思うんですが、世間から隠れることで余計に偏見を助長することになるんじゃないかと思うんです。児童養護施設で暮らす子どもたちは何も悪くないのに、隠すことによって「施設は悪いことをしてるんじゃないか」「悪い子たちが集まっている」というイメージを余計に煽ってしまう。そうじゃないんだよ、ということは見せていかなきゃいけないと思うのですが。

菅原「それはそう思いますね。

私が以前いたその施設では、あるとき通信のトラブルのせいで、行事のためのバスの予約ができなったことがありました。それで、困ってますということをタウン誌に載せてくれた人がいたんですが、地域のバス会社の人がその記事を見つけてくれて、「うちで出すからいいよ」と言ってくださったんです。
それ以降その会社とはつながりができていろいろとお世話になったんですが、そこの社長が言うには、「児童養護施設っていうのは、もっと外に向かってこうして欲しい、ああして欲しいって言わなきゃダメなんだ」と。「俺たちは何かしたくても、何をしていいか分かんないんだから。それを道筋つけるのは児童養護施設の仕事だろう」と。
それを聞いて以来、私は外に出向いていって関係をつくって、何かあった時は協力してもらう、ということを大事にするようになりました。」

カフェから生まれる「広がり」

――カフェをやって見えてきたこと、得られたことはありますか。

竹村「一番印象に残っているのは最初の第1回目です。その時は単に「施設と里親の説明をする会」ということで告知して、4人の方がお見えになったんですが、そのうち2人が「里親に興味がある」と言ってわざわざ世田谷区から聞きに来てくださっていたんです。他の2人はたしかこの近所の方だったんですが、世田谷から来られたことにびっくりして。「里親に興味があるけど情報を聞ける場所がない」と。「児童相談所が主催する説明会のようなものは年に1、2回しかないし、そもそも児童相談所に行くこと自体に心理的ハードルがあるし」と(笑)。それで調べていたらたまたまうちのオープンカフェのことを見つけて、来てくださったということでした。

その後も、里親に限らず「何かしたいんだけど、何をしていいかわからない、情報がない」という理由でお見えになる方は過去27回を通じて多く、驚いた部分でした。

最初は「知ってもらおう」ということで始めたんですが、参加者とつながることで、目に見える成果につながるケースも出てきました。
例えば芸術系のNPOの方がカフェに参加されていて、そのご縁でうちでアートのワークショップを開催したりとか。カフェに参加した方がうちのフレンドホームになってくれたりとか(※「フレンドホーム」は、児童養護施設の子どもを週末や夏休みなどの短期間、一般家庭で預かり、子どもに家庭生活の経験を提供する制度)。あとはうちの法人に就職してくれた人がいた、とか(笑)。
カフェが「つながる」場だけじゃなくて、「生み出す」場になってきていると感じます。それが一番ありがたくて、嬉しかったことですね。」

長く続けられるように

――逆に、オープンカフェの今後の課題は。

竹村「僕がきっかけになって始めたので今でも僕が担当してますけど、どこかで他の職員に引き継がないといけないなとは思っているんです。せっかく始めたことだし、それなり成果が出てきている中で、今後も続けていくためには僕じゃない職員にもできるような形で残していかないと。
去年からずっとそう思ってるんですけど、今年はまだ引き継ぎがそれほどうまくいってなくて(笑)。一応、僕が中心になってやるのは今回が最後ということにしていますが、まあ今後はどうなっていくか分からない部分もあります。」

――では、今後オープンカフェでトライしてみたいことは。

竹村「一番のトライはそれこそ他の職員に引き継ぐことなんですけど(笑)。

これから社会的養護を展開していくうえで、僕たちの力だけでできることには限界があって、地域とか社会の力を借りていかないといけないです。
そういったことを地域の人も含めてみんなで、同じ土俵で話し合える場がほしいと思っていて、オープンカフェをそういう場として発展させていけたらなと。
最初は「知ってもらう」という意識でこちらが喋っていたのが、2年目以降はより学習会的な場に近づいてきて。今後は……うまく言えないんですが、職員の目線だからわかることを、地域の人にも共有して、みんなで語り合える場にしたいというか……「円卓会議」といった感じでしょうか。」


二葉むさしが丘学園の玄関。この日もオープンカフェだったので、中央の張り紙に「オープンカフェ 会場 ←」と書いてあります。/ Copyright 2018 社会で子育てドットコム

――親と一緒に暮らせない子どもたちのために児童養護施設があるわけですが、そうした子どもたちと施設を「地域」はどう支えていくのか。難しいけれど、みんなで答えを見つけていかないといけない問題ですよね。
菅原施設長と竹村さん、いろいろなお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました!「オープンカフェふたば」の益々の発展を願っております。

【2018年8月7日追記】お二人には、二葉むさしが丘学園で必要としている支援や、社会に向けて伝えたいことについてもインタビューさせていただきました。こちらの記事をご覧ください!

※この記事に関するお問い合わせは、二葉むさしが丘学園ではなく、社会で子育てドットコム編集部(NPO法人ライツオン・チルドレン)までお寄せください
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「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。