里親委託を自治体が推し進められるよう、厚生労働省が補助金を2019年度に増額する方針であることがわかりました。里親のリクルートや研修などの業務にあたる常勤職員を置いた自治体に補助金が追加されるとのことです。
日本経済新聞、産経新聞などが報じました。
里親は、虐待や経済的事情などさまざまな理由で親と一緒に暮らせない子どもの受け皿のひとつです。
施設(児童養護施設・乳児院)と里親等(里親・ファミリーホーム)に委託されている子どもの数は、2017年度は約8:2となっており、施設への依存度が高くなっています[1]。
厚労省は2019年度の概算要求で、児童虐待防止や社会的養育の推進のために1655億円を計上しており、この一部を里親委託推進に充てる方針だということです。
これにより、自治体に対して以下のような補助が追加されることになります。
- 制度説明会など普及啓発の企画立案などを担う「里親リクルーター」や、里親に対して子どもへの接し方などの研修を実施する「里親トレーナー」といった常勤職員を配置した自治体に対し、年間約500万円を補助する
- 里親からの相談を休日・夜間に受け付ける職員を置いた場合には、年間約280万円を補助する
- 里親の新規登録や委託件数の実績に応じて補助を上乗せする
また、こうした里親のリクルートや研修などの業務は、自治体からNPOなどの民間機関に委託することが認められています。
受託機関が上記のような常勤職員を配置した場合も、自治体を通じて今回の補助金を受け取ることができるということです。
この背景のひとつとして、里親の委託を担う児童相談所で人手不足が指摘されていることが挙げられます。
なお、児童養護施設・乳児院には平成24年度から「里親支援専門相談員」が配置され、児童相談所などと連携しながら里親委託推進や里親支援を行うことになっています[1]。
厚労省は子どもを可能な限り家庭的な環境で養育すべく、2027年頃までに施設への依存度を下げ、里親委託の割合(里親(等)委託率)を大幅に増やすなどの目標を掲げています[2]。
その一方で、自治体間で里親等委託率のバラつきが大きかったり[1]、里親による里子への虐待が依然として起きていたりと、解決すべき課題は多く、里親をリクルートしたり支援したりする体制の整備が喫緊の課題となっています。
厚労省は今回の補助金などを通じて自治体に取り組みを促し、里親委託の裾野を広げていきたい考えだということです。
社会で子育てドットコム編集部
「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。
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