「遠い親戚のお子さんを預かる気持ち」――フレンドホームとして子どもと交流する方々の声

東京都の「フレンドホーム」は、児童養護施設・乳児院で暮らす子どもが、週末などに一般家庭で家庭経験をさせてもらう制度です。
制度自体の知名度がまだ低いこともあり、実際にフレンドホームをされている方の声を聞く機会はなかなかないのが現状です。
そこで今回は、都内でフレンドホームを実際になさっている5人の方に、アンケート形式でお話を伺いました!

フレンドホームとは?


児童養護施設・乳児院では、虐待や親の病気など様々な理由で親と暮らせない子どもたちが暮らしていますが、中には施設での暮らしが長く、家庭経験がほとんどない子どももいます。
そうした子どもに家庭体験を提供するためのしくみが、東京都の「フレンドホーム」です。(同様の制度・取り組みは全国各地で行われています。)
東京都のフレンドホームでは、だいたい半日~数日間単位の交流を継続していきます。
制度の詳細は「社会で子育てドットコム」のこちらの記事や、東京都のウェブサイトをご覧ください。

「遠い親戚のお子さんを預かる気持ちと同じ」

「児童相談所の紹介で制度を知った」というAさん。5年にわたって、児童養護施設の子どもと交流してきました。
50代のAさんは夫と共働きで、お母さまと同居しておられます。
フレンドホームを始める前は子どもとの相性に不安があったそうですが、児童相談所の職員らの後押しを受けて決断したとのこと。

「預かるお子さんの成長に楽しみがあり、自分たちの家庭もその子の話題で賑やかになりました。認知症のはずの高齢の母も子ども可愛さで、主体的な言動が増え元気になりました。」

「お子さんには『我が子ならば』という愛情を注いでいますが、一方で自分たちとは違う氏を持つ存在です。」
「遠い親戚のお子さんを預かる気持ちと同じ、と気付いたら楽になりました。見返りを期待しないような気持ちでお預かりしています。」

「心配も楽しみも、とっさの対応に討論する夫婦関係は、より一層濃くなったように思います。夫婦もしょせん、始めは他人。お預かりするお子さんも同じです。共に子どもを預かる苦労と充実感を味わっていきたいものです。」


画像はイメージ。/ Photo by Yagi-Studio, iStock

「友達以上、親未満でいること」

Bさんは40代で専業主婦をされています。
ご主人は仕事で忙しく、夫婦共に過ごせる時間は週末しかありませんでしたが、「寄付ではない形で社会貢献がしたい」とフレンドホームになり、お子さんを預かるようになりました。

「子どもの成長を間近でみることができて、感動します。」

気をつけているのは「子どもの実の親に関して、絶対に否定しないこと。子どもの親になろうとしないこと。友達以上、親未満でいること。」
(※児童養護施設・乳児院の子どもの多くには実親がいます。)

「子どもが自分の思い通りにならないのは、自分で産んでも他人が産んでも変わりません。それを神様からのプレゼントだと思って、子どもと一緒に楽しみたいです。」

「もしフレンドホームになるか迷っているのならば、ぜひ一歩勇気を出してやってみてもらいたいです。でも簡単には投げ出さない覚悟だけはして欲しいです。子どもも傷つくので。」

「仕事がひと段落して余裕ができたので」

40代女性のCさんは、児童養護施設のホームページを見て、制度を知りました。
ご夫婦とお子さん(未成年)で一緒に暮らしており、Cさんご自身は在宅でお仕事をされています。
仕事がひと段落して少し余裕ができたタイミングでフレンドホームになりました。

「フレンドホームとして気を使い過ぎず、お子さんの前で普通に振る舞うようにしています。」

フレンドホームになってそろそろ1年。
「わずかではあるけれど、お子さんに家庭での体験をさせてあげられていると思います」と話されていました。

「難しいこともあるけど、有意義」

50代男性のDさん。
「娘が留学支援団体の支援を受けてオランダに留学したことがきっかけ。支援のありがたさを知って、自分も社会のために何かお手伝いしたいと思いました。」
そんな時、奥様からフレンドホーム制度のことを教えてもらったそうです。

始める前は、「一般家庭の子と違う環境にいる子たちなので、どんな行動をするかわからないことが不安」だったとのこと。
実際に交流を進めてみると、お子さんは「とにかく我慢したり待つことが出来ないようで、順番待ちしていても、突然『やめた』と言って抜け出してしまったりします。やる気にさせることが難しいです。」

それでも施設のお子さんのためにフレンドホームを続け、2年が経ちました。
「フレンドホームをやってよかったと思うのは、預かった子が打ち解けてきて、それまで拒否されてきたことを受け入れてくれた時。そして、その子が公園で遊んでいる時や買い物をしている時などで笑顔を見せてくれた時です。」

「児童養護施設の子どもたちは、いわば『社会の子』。その子たちが将来社会で適応できるように、少しでも貢献できればいいなと思います。そしてそれは、私たちにとっても有意義な時間になると思います。」


画像はイメージ。/ Photo by すしぱく, ぱくたそ

「未来を生きる人にエネルギーを渡す」

40代女性のEさんは、インターネットで里親制度のことを調べている時、フレンドホームのことを知りました。

フレンドホームの条件は同居する親族等の大人がいること。夫婦でなくても登録が可能です。
妹さん2人と同居しているEさんもフレンドホームになりました。

「学生時代のゼミの教授に『教育に関係したことを何かやった方が良い』と言って頂いたのが、一番のきっかけです。」
「長期間続けられるかどうかが心配でしたが、心配している時間がもったいないと思い、児童養護施設に相談して登録を開始しました。」

「交流中のお子さまは、大切にされているせいか非常に素直です。良い面が見えた時は褒める。悪い面か見えた時は、一度立ち止まって確認するようにしています。」

「どんな人に接するのも難しいので、フレンドホームの子どもだから難しいとは感じていません。施設や教育機関では出来ない体験をしてもらえるように心がけています。遊びと生きる上で必要な学習(勉強や家事など)のバランスを大切にしています。」

「世の中には、味方になってくれる人も沢山居る事を伝えたいです。自分よりも未来を生きる人にエネルギーを渡す活動は、とてもクリエイティブでフレンドホームに参加して良かったと感じています。少しでも人の為に時間を使いたいと思う方でしたら、始めた方が良いと思います。」

おわりに

フレンドホームは、親元で暮らせない子どもの子育てに個人が直接関わる機会です。
施設でのボランティアとは少し違いますし、寄付でもありませんが、大切な社会貢献のカタチと言えるでしょう。

今回のアンケートでは、フレンドホームをされている皆様が子どもとの距離感に注意しつつ、たくさんの愛情を注いでおられる姿が垣間見えました。
皆様が「社会で子育て」に高い関心を持って行動されていることに、私たちもとても勇気づけられる思いがしました。
これからもっと、フレンドホーム(や各地の類似の制度)の知名度が上がってくれればと思います!
フレンドホームに関心を持たれた方は、登録条件や手続きについて紹介したこちらの記事もぜひご覧ください。

今回は都内の3か所の児童養護施設に登録する5人のフレンドホームさんにアンケートにご協力いただきました。
取材にご協力くださった皆様、ありがとうございました!

社会で子育てドットコム編集部
社会で子育てドットコム編集部

「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。