児童養護施設・乳児院・自立援助ホームに寄付する――なぜ寄付が必要?どうやって寄付する?

「児童養護施設」「乳児院」「自立援助ホーム」は、虐待や経済的事情などで親と暮らせない子どもたちが暮らす施設です。
こうした施設の多くは民間が設置・運営しています。基本的に公費で運営されていますが、施設ごとに寄付を募っていることは少なくありません。

公費で運営されている施設のはずなのに、なぜ寄付金が必要なのか。そしてどうやって寄付すればいいのか。
今回の記事では金銭の寄付について取り上げてみます。(物品の寄付については別の記事で解説しています。)

児童養護施設・乳児院に寄付が必要な理由

「児童養護施設」や「乳児院」は、虐待や経済的事情などで親と暮らせない子どもたちが暮らす場所です。
その大半は民間が設置・運営していて[1a,1b]、自治体の一部である「児童相談所」とはまったく異なる位置づけです。

これらの施設の運営資金は、基本的には公費、つまり税金から支出されています(「措置費」や補助金など)[2]。
施設は配分された公費を使って、子どもたちの衣食住の費用や学費、職員の人件費などを賄っています。

ただ、これらの公費は使い道が細かく指定されています。
それに対して、外部からの寄付金であれば使い道に制約はありません。(寄付者が使い道を指定した場合は別です。)

以下では、一般的に寄付が必要になるポイントを解説します(実際には地域ごと、施設ごとに差があります)。

例えば子どもにいろいろな体験をさせて、視野を広げたり、子ども自身の可能性を探ったりするのにも、お金が必要です。
公費から「教養娯楽費」「教育費」などの名目でお金が出ていますが、外部からの寄付金によって選択肢や回数を増やすことができます。
寄付金は遊園地に行く、外食をするなどのレクリエーションや、お誕生日などのプレゼントの費用習い事の費用に充てられる場合があります。

子ども1人ひとりの個別のニーズに応えるうえで、寄付が重要な場合もあります。
職員の数がもっと増えれば、子どもの話をじっくり聞くなどのより手厚いケアができると考えられます。
しかし、国・自治体の基準以上の職員数を配置する場合、その分の人件費は各施設の持ち出しになっています。

育ち盛りの子どもの食費や洋服代がもっと欲しいとか、子どもの通院のための乗用車や電動アシスト付き自転車を買いたい施設の建物を修繕する資金が足りない、という施設もあります。

この他、18歳を過ぎて退所する子どもの新生活の準備や、退所後の支援(アフターケア)などにお金が使われることもあります。
自立支援や退所後支援のための資金も公費から支出されていますが、「住む場所がなくなった」などの突発的なトラブルに対して、資金が足りないとの声も聞きます。

カタチのないお金だからこそ、施設や子ども1人ひとりのニーズに合わせた使い方ができる、と言えるでしょう。

自立援助ホームに寄付が必要な理由

「自立援助ホーム」は、なんらかの理由で家庭にいられなくなり、働いて自立せざるを得なくなった青少年達に暮らしの場を提供する施設です。
この「自立援助ホーム」は、児童養護施設を18歳で出なければならない若者への受け皿のひとつにもなっています。

自立援助ホームの多くをNPOや社会福祉法人などの民間団体が運営しています[1c]。
児童福祉法で定められた事業ですが、児童養護施設などと比べて公費による支出がまだ小さく、財政的に厳しいところが多いと言われています。
児童養護施設ほどの知名度はまだありませんが、自立援助ホームも支援を必要としているのです。

施設に直接寄付する方法

実際に寄付をする前に、各施設のホームページをチェックしたりして、受付状況を確認してください。
寄付先を探す際は、全国の児童養護施設のリスト[1a]地図乳児院リスト[1b]自立援助ホームリスト[1c]も活用できます。

寄付を受け付けている場合、郵便振替口座振込に対応していることがほとんどです。
後援会の会費という形で寄付を募っている施設も多いです。

クレジットカードでの寄付に対応している施設は少数です。
施設が自らクラウドファンディングを行っているケースはあまりないようです。
中には、寄付の受け取り方法を「施設にて現金で手渡し」に限定している場合もあるようです。

団体などを通じて寄付する方法

どの施設を選んでいいか決められない場合は、信用のおける団体を通じて寄付する方法もあります。

例えば「赤い羽根共同募金」は寄付の使い道として「子どものために」を選ぶことができます。この場合、寄付金は児童養護施設・乳児院や保育園などに配分されることになります[3a]。
また、「あしなが育英会」は親を亡くした子どもなどに奨学金を提供していて[4]、児童養護施設や里親家庭で暮らす子どもも多く利用しています(※厳密には施設ではなく子ども個人への分配となります)。
いずれもクレジットカード決済に対応しています。

この他、ふるさと納税を通じて寄付する方法もあります。
自治体によっては、ふるさと納税で「地域の児童養護施設等に寄付する」といったメニューを用意している場合があるので、チェックしてみてください。

寄付する側のメリット

寄付する側にメリットがある場合もあります。

児童養護施設、乳児院、自立援助ホームを運営する法人が一定の要件を満たしている場合、その法人への寄付は税制優遇の対象になります[5a,5b]。
つまり、寄付をすると税金が減ってトクをする、ということです。
個人が寄付する場合[5a]と企業(法人)が寄付する場合[5b]とで適用される制度が違いますが、ほぼ同じメリットを享受できます。

「赤い羽根共同募金」やふるさと納税も、寄付した分に対して税制優遇があります[3b,6]。

寄付する前に、寄付先のホームページをチェックしたり、問い合わせたりして、税制優遇を受けられるかどうか確認してください。
その際、優遇を受けるために必要な書類がないかも確認しておくとスムーズです。

おわりに

寄付も「社会で子育て」を実現する方法のひとつです。

児童養護施設などの広報誌(いわゆる「施設だより」)を目にする機会はなかなかないと思いますが、もし目にする機会があれば、そこに寄付者の一覧が載っていないか確認してみてください。
東京の施設だと、有名な企業やNPO、地元の中小企業、学校やPTA、商店会、個人など、いろいろな人の名前が載っています。
少しの寄付でも、積み重なれば大きなパワーになるはずです。

この記事では、児童養護施設・乳児院・自立援助ホームへの寄付が大切な役割を果たすことと、一定の条件を満たせば、寄付した側にもメリットがあることを解説しました。
寄付は誰でも少額から始めることができます。ぜひこの機会に検討してみてください。

参考文献

  • [1a] 全国児養護施設協議会「全国児童養護施設一覧」掲載日不明、2019年8月28日閲覧( リンク
  • [1b] 全国乳児福祉協議会「全国の乳児院リスト」2019年1月付、2019年8月28日閲覧( リンク
  • [1c] 全国自立援助ホーム協議会「自立援助ホーム一覧」2019年7月1日付、2019年8月28日閲覧( リンク
  • [2] 厚生労働省「児童福祉法による児童入所施設措置費等国庫負担金について(平成29年3月9日厚生労働省発雇児0309第4号)」平成29年3月9日付、2019年8月28日閲覧( リンク
  • [3a] 社会福祉法人中央共同募金会「赤い羽根共同募金」2019年8月28日閲覧( リンク
  • [3b] 社会福祉法人中央共同募金会「寄付金の税制優遇」2019年8月28日閲覧( リンク
  • [4] 一般社団法人あしなが育英会「ご支援について」2019年8月28日閲覧( リンク
  • [5a] 国税庁「No.1266 公益社団法人等に寄附をしたとき」掲載日不明、2019年8月28日閲覧( リンク
  • [5b] 国税庁「No.5283 特定公益増進法人に対する寄附金」掲載日不明、2019年8月28日閲覧( リンク
  • [6] 総務省ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税のしくみ 税金の控除について」掲載日不明、2019年8月28日閲覧( リンク
社会で子育てドットコム編集部
社会で子育てドットコム編集部

「社会で子育てドットコム」編集部では、虐待や経済的事情などの理由により親と暮らせない子どもたちを中心に、児童福祉についてニュース紹介や記事の執筆をしています。NPO法人ライツオン・チルドレンが運営しています(寄付はこちらから→ https://lightson-children.com/support/#donation )。