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「懲戒権」に関する見直し議論が加速――都条例案のパブコメには懸念や戸惑いの声も

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日本の民法には、保護者が教育などに必要な範囲内で子どもを懲戒できるとの規定がありますが、この「懲戒権」について規定の在り方を見直す動きが強まっています。
この記事では、児童虐待・体罰・懲戒権に関するここ1カ月間の一連のニュースをまとめて紹介します。

民法

(懲戒)
第八百二十二条 親権を行う者は、第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。
最終更新:平成二十九年六月二十一日公布(平成二十九年法律第六十九号)改正

児童虐待の防止等に関する法律

第十四条 児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超えて当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。
最終更新:平成三十年七月十三日公布(平成三十年法律第七十二号)改正

子どもの権利委員会

国連の「子どもの権利委員会」(Convention on the Rights of the Child; CRC)では、子どもへの体罰が法律で明確に禁止されていないとして、日本に法整備を求める報告をまとめました。
NHKニュースなどが報じました。

子どもの権利委員会は「子どもの権利条約」に基づいて人権高等弁務官事務所に設置されているもので、条約を批准している国の子どもの権利の状況を定期的に調べ、懸念事項や推奨事項をまとめています。
委員会は2019年1月14日からジュネーヴで日本を含む7か国について審査をし、2月1日に結果をまとめました

それによると、日本では

といった点が指摘されました。(なお、現行の児童虐待防止法は「何人も(子供への)虐待を行ってはならない」と規定しています。)
委員会はあらゆる場面での体罰を明確に法律で禁止すべきだと提言しています。

子どもへの体罰の禁止を提言するNGO「Global Initiative to End All Corporal Punishment of Children」が2019年2月15日現在掲示している資料によると、刑務所を含むあらゆる場面で子どもへの体罰を禁止する法律を整備した国は、北欧・東欧・南米を中心に少なくとも50か国以上に上っています。
一方、先進国の中でもアメリカ、イギリス、フランス、オーストラリアなどでは、体罰が全面的には禁止されていないということです。

都、体罰禁止を含む条例案のパブリックコメント公表

一方、東京都は保護者による虐待を明確に禁止する独自の条例案の準備を進めており、2018年末に募集したパブリックコメントの結果を2月12日に公表しました。
保護者による体罰の禁止について特に多くのコメントが寄せられています。
都が公表した資料によると、

などの反対の声が寄せられた一方、

などの賛成意見も寄せられています。また、

といった要望も寄せられています。

都は資料の中で、条例案は「子の利益に反する」行為として体罰等を禁止するもので、民法の懲戒権に抵触することはなく、保護者の適切・必要なしつけを抑制するものではないとしています。
この条例案は、2月20日に開会する都議会の定例会に提出され、審議が行われるということです。

超党派議連、体罰禁止の法整備を求める

こうした動きに前後して、千葉県野田市で小学4年生の女の子が死亡し、両親が逮捕される事件が発生しました。
この事件を受けて、児童虐待の防止に取り組む超党派の議員連盟は「子どもへの体罰を禁止する法整備を速やかに検討すること」などを盛り込んだ決議文をまとめ、2月14日に根本厚生労働大臣に提出しました(NHKニュース首都圏版)。


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首相「懲戒権規定の見直しを検討」

こうした中、2月13日の衆議院予算委員会で、民法が規定する懲戒権について安倍晋三首相は「あくまで子の利益のためだと明確にされているが、規定のあり方を法務省に検討させたい」と述べ、見直しも含めて検討する考えを示しまた(NHKニュースなど)。
その後、山下法務大臣は記者会見で、懲戒権は「民法の規定上もあくまで子の利益のためのもので、虐待にあたるような行為は正当化されないことは明らかだ」、「規定の在り方については必要な検討を行っていきたい」と述べ、担当する部局に検討を指示したことを明らかにしました(NHKニュース)。

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