児童養護施設や里親家庭で子どもが虐待を受けたケースが2015年度に83件(123人)、2016年度に87件(128人)あったとするデータを、厚生労働省がまとめたことがわかりました。
共同通信を配信元として、産経新聞、日本経済新聞など報道各社が伝えました。
児童養護施設や里親家庭、ファミリーホームでは、虐待や経済的事情などで親と一緒に暮らせない子どもたちが生活しています。
(「ファミリーホーム」とは、個人が養育補助者と共に住居で5~6人の子どもを預かって養育する制度で、児童養護施設と里親家庭の中間のようなタイプです。)
今回報道されたデータは、施設職員や里親の行為に関する相談や通告を自治体が調査し、厚生労働省が数字をまとめたものだということです。
虐待被害の件数、人数ともに2014年度の62件(86人)から増加傾向にあります。
虐待が起きた場所ごとに整理すると、児童養護施設は2015年度が40件、2016年度が53件でした。
里親家庭とファミリーホーム(以下「里親等」)が合わせて2015年度11件、2016年度13件でした。
この他、障害児入所施設や児童自立支援施設でも起きていたということです。
虐待の内容別では、暴力を伴う身体的虐待が2015年度49件、2016年度52件で最多でした。
次いで暴言などの心理的虐待は2015年度18件、2016年度16件、そして性的虐待は2015年度14件、2016年度15件でした。
また、虐待の被害が続いた期間は1週間以内が最も多かったものの、半年以上の長期にわたった子どももいたということです。
施設でも里親等でも虐待発生率は同程度
児童養護施設と里親等では、委託されている子どもの数がおよそ8:2で施設に偏っています[1][2]。
今回明らかになった虐待被害の件数も施設と里親等で8:2程度に分かれていて、虐待被害の発生率は施設と里親等の区別に関係なくほぼ一定だったことになります。
実際に計算してみると、児童養護施設では子ども1000人につき1.5件~2件程度、里親等では子ども1000人につき1.8件~2件程度の虐待被害があったことになります。
対策は
今回の報道によると、施設職員や里親による虐待を自治体が把握した時は、施設には再発防止を指導し、里親には相談支援体制や研修を強化するなどの対応を取った、とされています。
児童養護施設では以前から、職員に対して人権・虐待に関する研修が行われるとともに、子どもに対しては人権の周知・啓発の取り組みが行われています[3]。
また、社会福祉法の規定に従って、施設は苦情解決の責任者(施設長や理事)と苦情受付担当者(施設職員)を任命しており、さらに外部の者を第三者委員に任命して、苦情解決の場への立会いや助言、調整を行ってもらうことになっています。
さらに、この第三者委員とは別に、福祉サービスの内容を第三者機関が評価するしくみがあり、施設の生活環境などについて子どもから直接聞き取りが行われています。
里親に対しては、児童相談所や、NPOなどの里親支援機関(フォスタリング機関)が相談窓口になって、里子に関する悩みなどの相談に乗ったり、研修を実施したりしています。
しかし、こうした対策がとられてきたにも関わらず施設職員や里親による虐待が増加傾向にあることが判明したことで、今後対策の有効性について議論を呼びそうです。