ここ数年、コンビニなど様々な職場で外国人が働く姿を目にする機会が増えてきたように思います。
2019年4月からは、外国人の新しい在留資格「特定技能」の制度が始まりました[1]。
国内で暮らす外国人の増加に合わせて、今後は外国人を親に持つ子どもが一層増えていくと思われます。
今回の記事では、児童福祉施設で暮らしている外国籍の子どもや、外国人の親を持つ子どもについてご紹介します。
児童福祉施設と外国籍等
児童福祉施設のうち「児童養護施設」や「乳児院」は、虐待や貧困など様々な事情で親と暮らせない子どもたちが暮らす施設です。
東京の児童養護施設に平成27年度に入所していた子どものうち、外国籍の子どもが51人、無国籍・国籍不明が17人で、合わせて2.3%を占めていました[2]。
国籍国の数は、子どもが10か国、父母は少なくとも26か国に及んでいます。
また、東京の乳児院に平成29年度に新規入所した子どものうち、外国人の親を持つ子どもが54人(16.6%)いました[3]。
この54人のうち、子ども自身も外国籍だったケースが21人、無国籍・国籍不明が合わせて10人でした。
一方、中日新聞が2019年3月1日時点で集計した調査によると、中部9県の児童養護施設94か所で、「日本国籍でない」子どもが少なくとも87人(入所者の2.4%)いることがわかったということです[4]。
このように、児童福祉施設には外国籍等の子どもたちも一定数暮らしていますが、厚生労働省は全国レベルの統計調査を行っておらず、人数の全体像は見えていません[4]。
言葉の壁
「社会で子育てドットコム」を運営するNPO法人ライツオン・チルドレンでは、児童養護施設などの子どもたちを支援する取り組みを行っています。
親が外国人という子どもに何人も出会いましたが、みんな日本語を日常語として使いこなしていました。
そんな中、ある高校生の子について、施設職員の方から気になる話を聞きました。
「この子は無口で、何を考えているのか掴み切れないことが多いのだけれど、もしかしたら日本語よりも家庭で使っていた○○語のほうが得意で、自分を表現しやすいのかもしれない。でも施設に○○語がわかる職員はおらず、彼の語学のレベルがわからないので、進路設計に苦慮している。」
原則18歳で施設を出て自立しなければならない子どもたちにとって、どの言葉を母語として生活や仕事を考えていくかは、非常に重要なポイントです。
さらに、子どもの在留資格や成育歴を把握したり、必要な手続きをしたりする上で、親との意思疎通が問題になるケースもあり、現場で大きな課題となっています。
先述の中日新聞の調査では、通訳の用意などの行政支援を求める声が児童養護施設から上がっていたということです[4]。
都内の母子生活支援施設の職員の方は、次にように話しています。
「日本語で十分な意思疎通ができない世帯の入居が増えてきたように感じる。日本語と英語だけでは対応が追いつかず、近いうちにタガログ語などの語学研修を導入することになるかもしれない。」
児童福祉はすべての子どもが対象
日本の児童福祉法は、「子どもの権利条約」の精神に則り、国籍に関する要件を設けていません[5]。
国内にいる子どもであれば、国籍を問わず、虐待からの保護など必要な福祉を受けられるとされています。
しかしながら、福祉を提供するうえで、言葉の他にも文化・宗教などの要素が課題になり得ます。
教育の現場に目を向けると、義務教育の対象になっていない外国籍の子どもが学校に通わない「不就学」の状態になっているケースが、問題として指摘されています[6,7]。
外国人労働者の受け入れを大幅に増やすことになった日本。
外国人を親に持つ子どもたちに、必要な福祉・教育を確保できるのか。
「社会で子育てドットコム」では、これからも注目していきたいと思います。
参考文献
- [1] 法務省「新たな外国人材受入れ(在留資格「特定技能」の創設等)」2019年4月17日閲覧( リンク )
- [2] 東京都社会福祉協議会 児童部会 調査研究部「平成27年度 児童養護施設入退所児童の状況」
- [3] 東京都社会福祉協議会 乳児部会「平成29年度 外国人を親に持つ措置児童の調査」
- [4] 中日新聞「中部に87人、国把握せず 養護施設の外国人児童」2019年4月1日( リンク )
- [5] 総務省e-Gov「児童福祉法」2019年4月17日閲覧( リンク )
- [6] NHKニュースWEB「News Up “見えない”子どもたち」2019年4月2日( リンク )
- [7] NHKニュースWEB「News Up 外国人は「対象外」ってどういうこと?」2019年4月9日( リンク )